今回はギャンブル依存症・ギャンブル障害・病的賭博※についてお話しします。
ギャンブル依存症は日本でも精神疾患として扱われています。依存のメカニズムは意志の強さ弱さや道徳心とは関係ありません。
日本は2016年にいわゆるカジノ法案が施行され、今後ギャンブル依存が増えるのではというニュースなどを目にすることがあるかと思います。しかし、いま現在すでにパチンコやパチスロ、競馬、競輪、競艇、宝くじ、など公式にギャンブルとはされていないものも含め、日本社会には簡単にギャンブルに接することができる場所と機会が身近にたいへん多くあります。
それらギャンブルに病的にはまり込んでしまっている人も少なくありません。
ギャンブル依存症になると本人の意思でギャンブルをすることをコントロールできず、それに伴って様々な問題が発生します。
本人の意思でギャンブルすることをコントロールできないとは、「今日は負けたからここでやめて、次は必ず取り返そう」というような考えも含まれます。「今日はここまでにしよう」と自分の意志でコントロールできているように見えますが、「今回の負けは次の勝ちで取り返す」という思考がギャンブル依存症の診断基準注3に含まれています。
DSM-5 ギャンブル障害の診断基準を元に作成されたチェックリスト
4項目以上あてはまる人はギャンブル依存症の可能性があります。 |
また、ギャンブル依存症の特徴として借金問題があり、すべてのギャンブル依存症患者が借金問題を抱えていると考えている研究者注4がいるほどお金のトラブルがおきやすい病気でもあります。
借金の発覚をきっかけにギャンブル依存が明らかになるケースもあります。借金をギャンブルで返そうという思考でどんどん借金が増えてしまうため、そのうち借金もできなくなり、ギャンブルをするお金を手に入れるために犯罪に手を染める事もあります。
借金問題は家族や友人、貸金業者なども巻き込むため、依存者本人だけの手には負えなくなります。いずれ弁護士などの専門家の力を借りたり、さらなる借金ができなくなるように日本貸金業協会に貸付自粛依頼などを出すなどの対処を行うことになります。
ギャンブル依存症の治療法としては、薬物療法の他に認知行動療法、動機づけ面接法、自助会への参加などがあります。
いずれにしてもまずギャンブル依存から脱却するために動くところから始まります。ギャンブルをもうやめたいと思ったその時に地域の精神保健福祉センターに相談しましょう。ギャンブル依存の相談窓口があり、地域の対応医療機関や自助グループなどの情報を得ることができます。また、ギャンブル依存症の方のご家族からの相談も精神保健福祉センターで受け付けています。
甲斐カウンセリングルームでもギャンブルをやめたいのにやってしまう方、ギャンブルで苦しんでいる方に助力できるよう取り組んでいます。
※ 「ギャンブル依存症」は正式にはDSM-5注1による「非物質関連症候群」内の「ギャンブル障害」、あるいはICD-10注2による「病的賭博」と呼称しますが、当サイトではわかりやすさを優先して「ギャンブル依存症」と表記します。また、厚生労働省の依存症対策推進本部による呼称は「ギャンブル等依存症」です。(2018年11月時点)
注1. アメリカ精神医学会出版「精神障害の診断と統計マニュアル 第五版」
注2. 世界保健機関(WHO)作成「疾病及び関連保健問題の国際統計分類 第十版」
注3. DSM-5 ギャンブル障害の診断基準 A-6「賭博で金をすった後、別の日にそれを取り戻しに帰ってくることが多い(失った金を“深追いする”)」
注4. 丹野ゆき 他