今回は吃音症についてお話しします。
吃音とは話しはじめのタイミングがつかめないために不自然な発声になってしまう症状のことです。日本では発達障害の一つとして扱われています。
幼児期に発症することが多く、成人後に後天的な病気から発症することもあります。症状としては話し始めの単語の連続や、単語の引き延ばし、声が出てこない難発などがあります。

幼児期発症の吃音の多くは数年で症状が消えますが、一部は成人後も残るという研究注1があります。成長するにしたがって周囲の人間とのコミュニケーションから吃音を自覚し、なんとか吃音を隠そうとして行う工夫(付随する身体の動き、勢い付け、回避、中止など)が、さらに会話を不自然に見せてしまうことがあります。

さらに思春期を過ぎると吃音が大きなストレスになりやすく、伝えたいことを上手に表現できないためにイライラしたり、人と会話すること自体に恐怖を感じてしまうようになることがあります。結果として登校拒否やひきこもり、社交不安障害などになってしまうこともあります。
治療は言語聴覚士 (ST)による言語療法が一般的・かつ効果的です。

甲斐カウンセリングルームでは言語療法は行っていませんが、不安や悩みを抱える吃音を持つご本人とのカウンセリングの他に、家族の方や学校・職場の方向けに”吃音を持つ人との接し方”の支援を行っています。たとえば「言いかけている言葉を先読みして『〇〇ってこと?』などと言わない」「話し方について助言をしない」などのいくつかのコツのようなものです。接し方を知ることで吃音を持っている方の気持ちが楽になり、良い環境を整える助けになればと考えています。

 


※「どもり」という呼び方は差別的であるという認識が一般的になってきています。

注1. Yairi, E.; Ambrose, N. G. (1999年). “Early childhood stuttering I: persistency and recovery rates” など