今回は、生活環境によって変わるストレス、都市生活と地方生活で受けるストレスなどについてお話しします。


いま皆さんはどこにお住まいでしょうか。東京のような大都会でしょうか。私が今いる山梨県のような地方でしょうか。それともある程度大きい地方都市でしょうか。人は、職業や家族関係だけでなく、住んでいる地域の環境によっても受けるストレスの種類や大きさが変わってきます。

気候による違い
私は日本各地を引っ越してきました。生活環境が変わる中で気が付いたのは受けるストレスの違いです。
当然ですが東北地方では冬の寒さというストレスがあります。慣れてしまえば平気という人もいますが、寒さや暑さというのは大きなストレス要因です。
私は東北に住んでいたころ、冬に陰鬱な気分になりやすいという事を実感として感じていました。重労働な雪かき、痒いしもやけ、さむい朝のつらさ、そういうストレスが積み重なるだけでもけっこう厳しいものがありました。暖かい地方に憧れたものです。
その後、私は甲信越の盆地に引っ越してきました。盆地の夏の暑いこと。大量の刺す虫。下着を絞れるほどに発汗するよう真夏は、冷房の効きすぎた建物内とのギャップで目眩がしました。そして暑すぎて眠れない夜。不快指数が高く、イライラが募ります。涼しい地方を懐かしく感じました。

これらは気候によるストレスの違いですが、それより強烈に感じたのは都市と地方での差です。

東京での満員電車
学生時代から長く続けていた東京での生活では、公共交通機関の大混雑が大変でした。昔住んでいた地方都市の混雑とは全く別次元の通勤ラッシュ。これは恐るべきストレス要因です。
人は誰でも、自分の周りに安心できる空間を感覚的に持っています。これをパーソナルスペースというのですが、だいたい赤の他人とは1~2メートルは離れていないと不快に思うものです。しかし満員電車はまったくパーソナルスペースを確保できません。自分が安心できるはずの範囲に知らない人々がどんどん入ってきます。また、自分も他人のパーソナルスペースを侵害してしまいます。学校や仕事への行きと帰りに毎日必ずです。つらい日々でした。特にパニック障害を発症してからは厳しいものがありました。
田舎でのスローライフ、開放的で自由な地方生活、マイカー通勤。そういうことを考えて地方へ脱出したくなる気持ちも非常によく理解できます。

地方での近所付き合い
その後、農業が盛んな地方で生活をするようになってみると、まったく別のストレスに遭遇しました。ものすごく濃密な近所付き合いです。
都市生活、特にマンションやアパートなどの集合住宅暮らしでは全く思いもよらなかったような近所付き合いが必須なのです。よそから引っ越してくると、10世帯程度の町内会に必ず参入させられます。1万円弱の年会費を払い、ローテーションで町内会長としての仕事を受け持ちます。毎月の報告会、河川の清掃、運動会、公民館の清掃などなど…すべてほぼ強制参加と言っていいレベルでの付き合いになります。
また、私が一番驚いた事はその土地固有の儀式のようなものが残っていることです。たとえば、雨乞いの儀式。いまも本当にあるのです。白装束を着た町内会長に家長たちが水をかけて祈祷するような儀式でした。他にも神社での町内全員揃って参加のお祓いの儀式。お葬式の時には参列者同士が腰に結んだ縄で繋がります。どれも東京暮らしでは想像もできなかったことです。
これは私の住んでいる地方でのお話ですが、ほかの地方でも都会から脱出して地方に引っ越した人は、イメージしていた自由で開放的なスローライフとはまったく異なる面があることに気が付くはずです。

今、ここの良いところを
結局、私はどこに住んでいてもストレスを感じ、別の場所をうらやましく思いました。寒ければ暑いところを、暑ければ寒いところを。騒がしい都会では静かな田舎を、共同体意識の強い田舎では個人主義の都会を。そうです。どこでもストレスはあるのです。そして、その時々に住んでいた場所には、それぞれ良いことや素敵なことも山ほどありました。ストレスに囚われてさえいなければ、世界はそう悪くもないのです。

避けられないストレスとどう付き合って生きていくかわからなくなった時、耐えきれないような気がしてきた時。心に余裕がなくなって素敵なことに目が向かなくなった時、ストレスのことばかり考えてしまうようになった時。そういう時こそカウンセリングを受けてみてください。ひとりで耐える必要なんかぜんぜんないのです。